Under_the_Fool's blog

自分がtweetしたことの内、漫画や映画等の感想についてまとめる方針です。

「島田清次郎 誰にも愛されなかった男」読了(2013/08/25)

 風野春樹氏「島田清次郎 誰にも愛されなかった男」読了。

 面白い。巻を置く能わず。

 「地上」で時代の寵児となった島田清次郎とその周辺で起きた出来事について当時の文芸誌(読者投稿欄の熱狂ぶりが良い!)や新聞資料を豊富に引用して書かれている。前半部分では島清の傲岸不遜ぶりを唖然としながらも面白く読んだが、後半部分の少将令嬢誘拐事件についての当時の報道や事件後の作品の出版拒否、そして精神病院に入院中の島田清次郎について掲載されていたイラスト付き記事とかを読むと、島清を取り巻く文壇マスコミももう一人の主人公の様に思える。

 ただ、筆者が精神科医ということもあり、島清が入院した病院からカルテを取り寄せて、ドイツ語と取っ組み合いながら色々と分析するのかなと期待していたのだが、大空襲によりカルテ等の一切の資料は消失したとのことであり少し残念である。

 ただ、「医師の観察」「本人直筆の手紙」「本人直筆の小説」が矛盾していることから、その医師によるカルテから正確なことが読み取れたか疑問。

 その代わり、同郷の作家による島田清次郎への追悼文「要するに彼は、誰にも愛されない男であった。そして常にその愛に飢えていた。」これこそまさしく島田清次郎の本質を言い当てているといえよう。

 抑制の効いたユーモアも本書の魅力。島清の影響を受けた若者が書いた作品について「土方美奇星(ミキオ)なるキラキラした名前の天才中学生が、『聖』という名のヒロインとともに世界人類を聖化する四部作(中略)第二部以降が刊行されることはなかった。」と「淡々と」書いているところとか。

 自分が個人的に好きな一文は「清次郎は、初対面の人間にはおおむねいい印象をあたえるのである。」(p72より引用)。  

 面白い。巻を置く能わず(二度言った)。 

 

 まぁ、じゃあ島田清次郎「地上」を今から読んでみるかと言われると…… 俺最強系の主人公で…… 周囲の女性はみな主人公を讃えて…… 悪役は清次郎が現実世界で嫌いな人間がモデルで…… となると…… う、うん。