「うは『うどん会』のう」読了(2013/06/09)

うは「うどん会」のう (アサヒコミックス) (あさひコミックス)
- 作者: 寺島令子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/03/29
- メディア: コミック
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寺島令子「うは『うどん会』のう」読了。
面白い!
ジャンルは今流行のエッセイコミックに分類されると思うが、中身が一味違う。
巷に出回っているエッセイものは作者一人が周囲の世界を主観的に描写したり、編集(だいたい一人)とやり取りをした後取材したり、作者が自分の家族について描写したりと、比較的少人数で形成されたコミュニティの内(家族)/外(自分対世間)のことを描いているのが多い。
しかし本作は「うどん会」なる10人のメンバーから成る、大人数といっても良いグループのことが描かれている。そして一つのコマに描かれる人数もそれに比例して多くなっている。実在の人物について描かれているだけあって、どのキャラも活き活きとしており、しかもみんな性格が「陽性」である。この「活き活きとした」「陽性の性格」「大人数」という要素が、登場人物が少人数のエッセイものにはない「清々しさ」を生み出している。おそらくは、作者自身もその「良さ」というものを自覚しているのだろう。
収録されているそれぞれの回の最後のコマで、うどん会のメンバーが全員集合しているものが多く、それは大勢で集まって色々なことをやる「楽しさ」を十二分に表したものになっている。こういった素晴らしい雰囲気を生み出すことができるのもおそらくは寺島氏の「社交的」「陽性」な性格によるものであろう(実際にお会いしたことはないが)。
少人数によるエッセイものの場合、「作者側 対 社会(世間)」という内容になりがちだが、本作の場合は既にうどん会コミュニティ内に「世間」が存在しており、その包容力が読むものに開放的な、つまり社会と緊張的な対立構造には無いという、雰囲気を与えてくれている。飽和しつつあるエッセイコミックのジャンルにおいて、無論、少人数のコミュニティによるものが無くなるということはないだろうが、最後に残されたフロンティアは「集団」「群像」ではなかろうか。少なくとも、本作からはエッセイものの新しい風を感じるのである。
ただし、こういった群像劇のコミックエッセイを描くには、作者側の「社交性」というものが必要とされる。男性の漫画家でこういったものを描けるとしたら…… いしかわじゅん氏あたりだろうか?(寺島氏とはアスキーつながりだし)